ヘリテージステーションホテル8

 二人でマレーシアへ渡る前、夫は単身マレーシアに一週間、ホテル暮らしをしたことがある。
私が成田空港まで迎えにゆくと、やつれた夫がいた。
 一週間でこんなにやつれるのか?!と、驚くほどのやつれぶりだった。

「ブラックコーヒーがない。飲み物すべてに砂糖が入っている」
「チキンソテーのソースで、ハニーオアペッパーって聞かれたんだ。マレーシアでは肉に蜂蜜かけるのか?耳を疑ったよ」
「香料があわない」「全部脂っこくて、甘い」
主人は丼物も苦手で、親子丼だったら具と御飯を別々にしないと食べたがらない。
汁のついた御飯が苦手なので、マレーシアのミックスライスも苦手だ。

これは、私が自炊するしかない。

 ヘリテージステーションホテルを滞在先に選んだのは、自炊ができると、あるHPに紹介されていたという理由があった。

しかし、実際は禁止されているのでできない。

室内にミニキッチンはあるが、コンロは無く、チェックイン時にも火気厳禁と説明された。

どうにかできないだろうか・・・。
私がホテル内をうろうろとしていると、Oさんに会った。

「水道の調子はどう?」

「大丈夫だよ。ありがとう。ところで、助けてくれないでしょうか?」

「もちろん、なんでしょう?」

「自分で料理をしたいんだけど、キッチンを貸してもらえないだろうか?」

「ええええ!!それは無理です。お役に立てなくてごめんなさい」

深々と頭を下げるOさん いや、あの、頭をあげてください。

「ここは重要建築物だから、火気厳禁なんです。あなたは何を調理したいの? 豚肉?」

これには私が噴き出した。イスラムの国で嫌われるような真似はしませんよ。

「いやいや、この国で豚肉は食べないよ。私は夫のために日本食を作りたいんです。レストランの日本食はとても高いから大変なんだ。」

「うーん、確かに日本食は高いね。えっ! 君が料理するの? ほんとに? 料理なんてできるの?」

「できるよ! するよ!」

Oさんは、うーん(理解できない)といった顔をしたあと、「とにかく、ホテル内でゲストは調理できないんだ。お役に立てなくて申し訳ない」と再度頭を下げた。

このとき、私は英語がでず、日本語で「大丈夫だよ。ありがとう。」と言ってしまった。

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